角瓶に関して 4
2020/01/19
角瓶に関して 4
前回からの続きです。今回は「ブレンド」に関して。
福輿 伸二 氏のエッセイより
味わいは変わらないとはいえ、角瓶に使用する原酒のタイプや配合比率は、時代によって変わりました。
樽に眠るウイスキーは生き物です。熟成期間が変われば香味は変化し、たとえ同じ種類の樽でも、寝かせる場所が違うだけで味わいはさまざまに変化します。10年、20年前にあった原酒は往々にして今はなく、今ある原酒も5年、10年先には、同じタイプが同じ量だけあるとは限りません。ブレンドの香味を維持するためには、レシピの変更は不可欠です。
昨年(2015年)でいえば角瓶のレシピは29回書き換えました。今年はすでにそれを上回っています。
では、どのように書き換えたのか、具体例をあげましょう。
「バーボン樽で熟成させた山崎モルト」。これは今の角瓶のブレンドに欠かせないモルト原酒の1つです。香味の特徴は、力強いウッディネス。そしてこの“ウッディネス”こそ、“力強さ”、すなわち“キック”と“ガツン”を生み出す源の一つです。
けれど、同じ「バーボン樽の山崎モルト」であっても、時にはウッディネスの強さがやや足りない原酒も生まれます。そんな時はどうするか?この場合、バーボン樽山崎モルトの配合を増やしても良いのですが、例えば他の手としては、「シェリー樽原酒」の配合をわずかに増やす。しかし、いずれにしても何かを増やせば、何かを減らさなくてはなりません。そこで、さまざまな試作品をつくってテストブレンドを繰り返し、一つのレシピを完成させます。これをひと月の間に二度三度、、、こうしていると一年が経つのはあっという間。まさに光陰矢の如し。発売以来およそ80年、角瓶のブレンドを守ってきたかつてのブレンダーたちも同じ思いでいたことでしょう。
そして仕事の後はバーに行き、角ハイを味わう人々の笑顔に加わる。 この満ち足りた気持ちもまた。
如何でしたでしょうか? もう少し、「角瓶」のお話にお付き合い下さい。